秋風が吹きはじめると
繁華(はんか)な街の灯(ひ)の色さえ
深い人生を想わせる
まして村落(そんらく)の夕暮れの
入日と雲のいろどりがみせる
自然の心の美しさは
過去から未来へと永続してゆく
いのちのひゞきを感じさせる
秋風が人の心を浄めるのか
人が秋風の中で心を開くのか
秋風は寂滅(じゃくめつ)への道を
人間世界に投げかける
秋風に導かれて冬に達する
自然のひそやかな歩みの中には
国と国との戦争(たたかい)もなく
人と人との欲望のひしめきもない
たゞ、寂静(じゃくじょう)の奥から輝き出でる
神の大調和の光明だけがひゞきわたり
恐れず騒がず静かにおだやかに
そしていのち輝やかに
自分たちの道を進んでゆくことを私たちに教えてくれるのだ
五井昌久 詩集『いのり』所収
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Profile
1916年(大正5年) 東京に生まれる。
1949年(昭和24年) 神我一体を経験し、覚者となる。
白光真宏会を主宰。祈りによる世界平和を提唱して、国内国外に共鳴者多数。
1980年(昭和55年) 帰神(逝去)する。
合気道の開祖・植芝盛平翁や、漢学者・安岡正篤氏とは、肝胆相照らす仲であった。
白光真宏会 公式ホームページ